ATL Forum ~成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)の病態と治療~
第2回|臨床編 |ATLの臨床 現状の整理とこれから
開催日:2021年9月8日(水)
開催場所:全国オンラインセミナー
座長:
埼玉医科大学国際医療センター
造血器腫瘍科 教授
塚崎 邦弘 先生
演者:
鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科
血液・膠原病内科学分野 教授
石塚 賢治 先生
今回は、成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)の臨床について現状の治療や課題、今後の期待についてお話しします。ATLは急性型、リンパ腫型、慢性型、くすぶり型の4つの病型に分類されますが、最近の治療法の進歩にもかかわらず、いずれの病型においても生命予後改善の余地はいまだ大きく残されています1)。
治療アルゴリズム
こちらは、現在のATLの治療アルゴリズムです。ATLはまず4つの臨床病型で分けられます。くすぶり型と予後不良因子を有していない慢性型はIndolent ATLとして、本邦では無治療経過観察と皮膚等の病変に対する局所治療が推奨されています。また、予後不良因子を有する慢性型と急性型、リンパ腫型はAggressive ATLとして化学療法を行います。Aggressive ATLで化学療法によってCRまたはPRとなった場合には同種移植を行います。一方、SDまたはPDの場合には、さらなる治療としてサルベージ化学療法、場合によっては同種移植が選択肢となります。SDまたはPDとなったAggressive ATLには、多剤併用療法やレナリドミド単剤、モガムリズマブ単剤療法(CCR4陽性のATLにおいて適応)が用いられますが、2021年6月に承認されたツシジノスタット(ハイヤスタ®)も、ここに加わる選択肢です。
今回は、ATLの臨床として、Aggressive ATLの現在の治療と今後についてご紹介します。

Aggressive ATLの一次治療
現在のAggressive ATLの一次治療では、modified LSG15(VCAP-AMP-VECP)療法が標準治療となっています2)。さらに、初発Aggressive ATLを対象としたモガムリズマブとmodified LSG15療法との併用療法を検討したランダム化第Ⅱ相比較試験において、CRを示した患者さんの割合は併用療法群が化学療法単独群を上回った3)ことから、併用療法も標準治療のひとつとして考えられています。
Aggressive ATLに対する同種造血幹細胞移植
続いて、Aggressive ATLに対する同種造血幹細胞移植についてです。移植後の生存曲線にはテールプラトーが見られ、2000年代に診断された患者では、生存期間中央値は5.9ヵ月、5年生存率は26%と報告されています。また、移植時の状態別の解析では、初回寛解時に移植を受けた群で生存率が良好であったことが示されています1)。
2000年代以降、移植領域では2つの大きな進歩がありました。高齢患者さんにおける「ミニ移植」、そしてATLの寛解期にいち早く移植を行う上で重要となる「臍帯血移植」の導入です。これらは移植対象の拡大という観点で大きな影響をもたらしました。
高齢者Aggressive ATLの治療
なお本邦では、ATLの患者さんの高齢化がみられています。1988~1989年、1996〜1997年、そして2010〜2011年に診断されたATL患者さんの年齢分布では、現在に近づくにつれ、若年層の割合は低下し、高齢層の割合が増加しています4)。この約20年の間に、診断時の平均年齢は10歳近く上昇しています。高齢化の背景には本邦特有のさまざまなファクターがあると考えられています。こうしたことから、日本では、高齢患者さんにおいてQOLを失わず実施可能な治療法の開発が必要といえます。このことは、現在の臨床における課題のひとつとなっています。また、高齢者の入院をなるべく避けるという観点では、内服できる治療の選択も大きなポイントになり得ます。
近未来のATL治療
ここまで、現在のAggressive ATL治療についてご紹介しましたが、近未来的には、どのような治療になるでしょうか。近未来のATL治療は大きく4つの方向に分けることができます。1つ目は、ATL細胞の表面抗原を標的とした治療です。これはCCR4を標的とする治療とCD30を標的とする治療がすでに導入されています。2つ目は、免疫環境を修飾する治療です。これについては、すでにレナリドミドが用いられています。また、免疫チェックポイント阻害剤の医師主導治験が進められています。3つ目は、分子異常を標的とした治療です。これはハイヤスタ®のようなHDAC阻害剤、そして現在治験段階のEZH1/2阻害剤があります。4つ目は、アポトーシス経路を標的とした治療で、今後研究開発が進められる予定となっています。

ハイヤスタ®(ツシジノスタット)の再発又は難治性ATLにおける有用性の検討
「警告・禁忌を含む使用上の注意」等はDIをご参照ください。
では、新たな治療選択肢となるハイヤスタ®について、国内臨床試験における有効性と安全性を見てみましょう。
この試験は、再発又は難治性成人ATLを有する日本人患者を対象に行われています。対象について注目すべきポイントは、モガムリズマブ投与歴のある患者さんのみを対象にしている点、そして前治療への反応性にかかわらず組み入れられている点です。

患者背景を見ると、年齢中央値は72歳と高齢であることが分かります。また、直近のATLに対する治療からの期間中央値は89.0日、すなわち約3ヵ月です。そして、21.7%、つまり約5分の1の患者が直近のATL治療への反応性から難治性と判断されています。

有効性
本試験は全体で23例中7例で奏効が認められ、主要評価項目である客観的奏効率(ORR)は30.4%でした。その内訳はCR1例、PR6例でした。また、病型別の奏効例(ORR)は急性型で13例中6例(46.2%)、リンパ腫型では8例中1例でした。

副次評価項目である無増悪生存期間(PFS)の中央値は7.6週でした。

また、奏効例における奏効期間中央値は28.1週でした。

安全性
続いてこちらには副作用及び有害事象を示しています。主な副作用は血小板減少症18例(78.3%)、好中球減少症12例(52.2%)、白血球減少症10例(43.5%)などでした。Grade 3以上の有害事象、重篤な有害事象、投与中止に至った有害事象の事象及び例数は表のとおりです。また、死亡に至った有害事象は認められませんでした。
血小板減少症や好中球減少症は主な副作用としてだけでなく、Grade 3以上の有害事象や重篤な有害事象、投与中止に至った有害事象としても報告されています。また、重篤な有害事象や投与中止に至った有害事象としてニューモシスチス・イロベチイ肺炎が報告されています。ATL治療において注意が必要な副作用のひとつですので、対策を行いながら治療を進めることが必要です。適切に副作用をマネジメントすることは治療継続の観点においても重要です。

1)Katsuya H, Ishitsuka K. et al; Blood. 2015;126(24):2570-7.
2)造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版補訂版(日本血液学会/金原出版) Ⅱリンパ腫、 8 成人T細胞白血病・リンパ腫より <アルゴリズム><本文抜粋>
3)Ishida T, et al. Br J Haematol. 2015;169(5):672-82.
4)Nosaka et al, Cancer Sci. 2017;108(12):2478-2486.
ATLに対する化学療法や移植の進歩は、少しずつ治療成績を向上させていっています。予後改善の余地はまだまだあるものの、日本人による薬剤の開発の寄与は大きく、今後さらに世界に貢献していくものと期待しています。これから再発又は難治性のATLに対して新たな治療選択肢としてハイヤスタ®が加わりますが、医師の立場として、市販後の有効性・安全性を適切に評価して薬を育てていくことが重要ではないでしょうか。
