
Dravet症候群の発症頻度は4万人に1人といわれ、1歳前に発症する疾患です。乳児期に、発熱時の全身けいれん発作で発症し、その後、無熱時の難治性全身けいれん発作に加え、ミオクロニー発作や非定型欠神発作、部分発作を合併します。てんかん発作は、小児の発達及び発育に大きく影響し、その結果、発達遅滞をきたし、発作予後及び発達予後ともに不良となります。死亡率は16~19%とされております。したがって、早期にてんかん発作やてんかん重積状態を抑えることが重要です。
Dravet症候群には、従来「乳児重症ミオクロニーてんかん」と呼ばれていた“中核群”と、症状や臨床的特徴の一部が異なる“辺縁群”が含まれます。
乳児重症ミオクロニーてんかんは、Dravet C.が1978年に特定した病型であり、1989年に国際抗てんかん連盟(ILAE)の分類において「焦点性か全般性か決定できないてんかん及びてんかん症候群」の一つとされました。その特徴は、「てんかんあるいは熱性けいれんの家族歴があり、発病以前の発達は正常で、発作は全般性あるいは一側性の有熱時の間代発作の型をとって現れる。生後1年以内に発病し、次いでミオクロニー発作としばしば部分発作をみる。脳波は、全般性の棘徐波と多棘徐波、早期の光感受性及び焦点性異常を示す。精神運動発達の遅れは生後2年目以降に現れ、失調、錐体外路徴候及び発作間欠時のミオクローヌスが出現する。この型のてんかんは、あらゆる治療に対し極めて強い抵抗性を示す。」と定義されています。
一方、上記の分類基準に合致しミオクロニー発作を発現する“中核群”とは別に、乳児重症ミオクロニーてんかんに類似した臨床像を示しながらミオクロニー発作を発現しない小児が“辺縁群”として報告されていました。これらの患者は、経過及び予後はミオクロニー発作を有する患者と同様であることから、乳児 重症ミオクロニーてんかんと同じ症候群に包含することが可能と考えられました。また、近年の遺伝子学的研究結果から、Dravet症候群患者の70~ 80%でSCN1A 遺伝子*変異が見られること、同じSCN1A 遺伝子変異をもつ家族内で中核群と辺縁群の患者がそれぞれ生じた例があること、中核群及び辺縁群ともにSCN1A遺伝子変異の出現頻度に差は認められないことなどから、中核群と辺縁群では症状のあらわれ方に差異を認めるものの、SCN1A 遺伝子がコードするNav1.1チャンネルの機能欠損が中心的な発症メカニズムと考えられるようになりました。以上の背景を基に疾患の名称並びに臨床像の変更が提案され、2003年にILAEの疾患の定義が改訂され、従来の“中核群”に相当する乳児重症ミオクロニーてんかんに“辺縁群”を含めた疾患集団に対して「Dravet症候群」という名称が提唱され現在に至っています。さらに2010年改訂のILAE分類において、てんかん症候群の分類名称が変更となったため、位置付けが「脳波臨床症候群」の一つと改訂されましたが、Dravet症候群の定義に変更はありません。
*ナトリウムイオンの神経細胞内への流入を制御する細胞膜の孔の構成成分の一種であるNav1.1というチャンネルタンパク質をコードしている遺伝子
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乳児期は、全身性又は一側性の強直間代発作もしくは間代発作で発症します。発症前の発達は正常です。発熱により発作が頻回に誘発されることが特徴的で、しばしば重積し、熱性けいれん重積状態として入院加療されることが多いです。入浴による発作誘発も多くみられます。年齢が上がるとともに、発熱に伴う発作は減少しますが、無熱時の全身けいれん発作は持続します。
幼児期に特徴的な発作型としてミオクロニー発作が出現する患児が多く、全身性の強いものから、肩など身体の一部分のみの軽いものまで含まれ、頻度も様々です。また、脳波上対応するてんかん発射を認めないミオクローヌスも出現します。
同時期に、約40 ~ 90%の患児に非定型欠神発作が出現します。症状は短い意識消失で、しばしばミオクロニー発作を伴います。非定型欠神発作が頻発し、非けいれん性てんかん重積状態を起こすことが知られています。これは数時間から数日間、非定型欠神発作が頻回に出現する状態で、この間ミオクロニー発作やけいれん発作を伴います。経過中、40 ~ 80%に部分発作が認められ、これは、動作停止や眼球偏位、頭部回旋、顔色不良などを伴う複雑部分発作が多くみられます。 幼児期は、重篤な発達障害があらわれてくる時期であり、1歳以降に、発達の遅れや自閉傾向などが次第に明らかとなってきます。 知的発達は、2~ 3歳をピークとして、その後は、退行していく場合、発達が止まる場合、緩やかではあるが発達する場合というように、個人差があります。
学童期では、ミオクロニー発作、非定型欠神発作は次第に減少し、消失します。しかし、多種類の抗てんかん薬の投与・調整にもかかわらず、全身けいれん発作や部分発作は持続し、難治に経過します。
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